
「経営管理ビザ」を無事に取得・更新するためには、日本における税金をきちんと払っておく必要があります。
日本にはさまざまな税金の種類がありますが、ここでは経営管理ビザに深く関わる「会社が払うべき税金」と「代表者個人が払うべき税金」について重点的に解説します。
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日本の税金制度はとても複雑です。不明な点はそのままにせず、ぜひ税理士さんに相談してくださいね!
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それでは見ていきましょう。
経営管理ビザの重要な用件は税金を支払っていること
日本国憲法では、国民の三大義務として
「教育の義務(26条2項)」「勤労の義務(27条1項)」「納税の義務(30条)」を掲げています。
国民の義務となるくらい、納税については非常に重要と考えられているのです。
日本では、会社(法人)を設立、あるいは個人事業を企業した場合は税務署や都税事務所もしくは市町村役場への届出も必要となります。
経営管理ビザ取得・更新時に、「ちゃんと納税しているかどうか」というのは非常に重要なポイントです。
初めて日本に入国し、経営管理ビザを取得する場合は、必要な諸手続きが税務署でなされているかを見られます。
また、既に別のビザで在留しており、経営管理ビザに変更する場合は、その前のビザで納税していたかを確認されますし、ビザを取得後の更新時も納税記録は厳格にチェックされるのです。
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もともと経営管理ビザが承認されるのも、結果的には収益を上げて日本に納税してくれるからという前提ですしね……
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日本での税金申告をすべき範囲について
法人(会社)の場合は、法人税の届出を税務署へ、法人事業税の届出を県と市町村(東京都23区の場合は都税事務所)へ届出、個人事業主の場合は開業届を税務署に提出します。
日本で「経理管理ビザ」の代表者は、最初は「非永住者」、日本における居住年数が5年を超えた場合は「非永住者以外の居住者」として扱われます。
[memo title=”MEMO”]
非永住者とは?
もし居住者のうち日本国籍がなく、かつ、過去10年以内の間に日本国内に住所又は居所を有する期間の合計が5年以下である場合は非永住者となり、以下の所得について課税されます。
・国内において生じた所得(国内源泉所得)
・日本国外の所得(国外源泉所得)で日本国内において支払われたもの、または日本国内に送金されたもの
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つまり、日本における所得のみが課税対象となるのです。
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しかし、以下の場合は、「非永住者以外の居住者」となり、所得が生じた場所が日本国の内外を問わず、そのすべての所得に対して課税されます。
[memo title=”MEMO”]
非永住者以外の居住者とは?
・永住権を取得
・もしくは、過去10年以内の間に日本国内に住所又は居所を有する期間の合計が5年超となった場合
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【参考】国税庁WEBサイト タックスアンサー No.2010 納税義務者となる個人
永住権を取得しなくても、居住年数が長くなると課税上は同様の扱いとなることに注意が必要です。
日本での税金の申告はいつ?
税務申告は年に一度です。法人と個人では、申告時期が異なります。
法人の税金の申告
法人は定めた任意の1年後に決算書(貸借対照表・損益計算書)を作成し、各種税金を計算し、決算日から2ヶ月以内に税務署へ申告する必要があります。
個人事業主の申告
個人事業主は1~12月の収益について2月半ば~3月半ば(その年により異なるが大体15日)までに確定申告書(青色申告する場合は青色申告決算書も)の提出・納税が必要です。
代表者個人・経理管理ビザの「管理」者の申告
また、代表者個人の納税記録も必要ですが、日本では企業に勤務する人は代表者も含め、毎月の給与から所得税を源泉徴収、前年度の所得から住民税を特別徴収として天引きしています。そのため、基本的には税務署に申告する必要はありません(収入が2000万円超える場合など要件を満たす場合は除く)。
12月の給与が確定したら、年末調整をおこない所得と税金を確定します。その際に作成した源泉徴収票もしくは法定調書は、更新手続きに必要なので必ず保管しましょう。
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代表者は法人の税金と、自分の報酬に対する税金を両方支払う必要があるのですね。
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それでは、以下必要な税金についてみていきましょう。
経営管理ビザに必要不可欠な事業にまつわる税金とは
会社を経営している場合は、年に一度「決算」を行い、損益計算書・貸借対照表といった「決算書類」の作成をおこないます。決算は、事業年度終了の日から2か月以内に終えて税金を納付しなくてはなりません。
決算をいつするのか、事業年度を何月から何月までにするかということは、会社を登記する際に自由に決めることができます。
日本では新年度が4月から始まるため、4月~翌年3月を事業年度にしている会社が多いですが、3月以上は決算業務が立て込むため、あえてその時期をずらすのも一計です。
個人事業主は、毎年1~12月の1年間の収支を翌年の2~3月に「確定申告」として行い、所得税と場合によっては消費税を支払う必要があります。法人と違って、1~12月というのはずらすことができません。
それでは、税金の種類について1つずつ見ていきましょう。
法人税
法人税の税率は、法人の区分に応じ、以下の表のとおりとされています。
区分 |
適用関係(開始事業年度) | ||||
2016.4.1~ | 2018.4.1~ | 2019.4.1~ | |||
資本金1億円以下の普通法人 | 年800万円以下の部分 | 下記以外の法人 | 15% | 15% | 15% |
適用除外事業者 (前3事業年度の平均所得金額が15億円超の中小企業者) |
19% |
参照:国税庁WEBサイト:タックスアンサー No.5759 法人税の税率より抜粋
消費税
日本で買い物をする際に支払っている消費税。事業においても、仕入れと利益の際にそれぞれかかった消費税の差額を収める必要があります。
事業年度における課税売上高が1,000万円以下の事業者は、納税の義務が免除されますが、資本金の額又は出資の金額が、1,000万円以上である場合は初年度から消費税の納付義務があります。
地方税(事業税・住民税・固定資産税)
日本で事業を行うにあたり、法人は国税である法人税と消費税の他に、地方税である法人事業税と法人住民税(事業用の資産がある場合は固定資産税も)納付する必要があります。
個人事業主の場合は自宅のある場所の自治体に住民税を、事務所のある自治体に事業税を(事業用の資産がある場合は固定資産税も)収める必要がありますが、事業税については都道府県によっては徴収されない場合もあります。
細かい税率については、本社所在地の都道府県によって異なりますので確認が必要です。
所得税・住民税
報酬を適正に出し、経営者個人として納税を行っているかということも、経営管理ビザの更新時には重症な要素です。
所得税
所得税は通常であれば毎月の源泉徴収から引去りされますが、年間収入が2000万円を超える場合や個人事業主などは確定申告が必要です。
確定申告時には、所得に応じて、以下の税率で所得税を計算し、既に源泉徴収・年末調整で納付済みの税額と差し引いて支払います。
課税される所得金額 | 税率 | 控除額 |
195万円以下 | 5% | 0円 |
195万円を超え 330万円以下 | 10% | 97,500円 |
330万円を超え 695万円以下 | 20% | 427,500円 |
695万円を超え 900万円以下 | 23% | 636,000円 |
900万円を超え 1,800万円以下 | 33% | 1,536,000円 |
1,800万円を超え4,000万円以下 | 40% | 2,796,000円 |
4,000万円超 | 45% | 4,796,000円 |
参照:国税庁WEBサイト:タックスアンサー No.2260 所得税の税率
住民税
住民税は賦課(ふか)方式を取っており、前年度の所得に応じて計算されるため、確定申告もしくは年末調整を行った翌年から課税対象になります。
役員報酬を適正に出し、外国人経営者個人として住民税の納税をしていることは、ビザ更新の審査上とても重要です。
住民税も地方税のため、住民票のある自治体によって税率は異なります。
[memo title=”MEMO”]
住民税は都道府県税と市区町村税で構成されていますが、支払いは同時に行います。
・東京都の場合は都民税+特別区民税・市民税など
・大阪府の場合は府民税+市民税など
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社会保険料
税金ではありませんが、必須なのが社会保険(厚生年金と健康保険)です。
社会保険は、会社を設立すると強制適用となります。こちらは、毎年4~6月の所得を元に7~翌年6月までの納付金額が計算され、会社と社員でそれぞれ半分ずつ支払います。
日本は皆保険制度を取っていますので、社会保険料も税金と同じくビザ更新時の審査対象です。
個人事業主の場合は、国民年金と国民健康保険となります。
経営管理ビザの税金を期限内に申告できなかった場合の対応について
日本における申告は期限が決まっており、法で定められた申告期限までに、納税申告書を提出しなければなりません。
もし、提出期限までに申告しなかった者は、その提出期限後でも税務署長による決定があるまでは、期限後申告書を提出することができます。
ただし、期限後申告をしたり、所得金額の決定を受けたりすると、申告等によって納める税金のほかに無申告加算税が課されます。
[alert title=”注意”]
各年分の無申告加算税は、原則として、納付すべき税額に対して、50万円までは15%、50万円を超える部分は20%の割合を乗じて計算した金額となります。
税務署の調査を受ける前に自主的に期限後申告をした場合には、この無申告加算税が5%の割合を乗じて計算した金額に軽減されます。
調査の事前通知の後にした場合は、50万円までは10%、50万円を超える部分は15%の割合を乗じた金額となります。
参照:国税庁WEBサイト:タックスアンサー No.2024 確定申告を忘れたとき
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なお、社会保険を滞納した場合も延滞金や日本年金機構による差し押さえが生じる場合があります。
税金の無申告や社会保険料の延滞については、悪質な場合は刑事罰に問われる場合もあります。
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うっかり……ではすまないのが、税金と社会保険料です。いずれも延滞しないようにしっかり納めましょう。
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期限内に申告した内容が間違っていた場合は
納税申告書を提出した後に誤りに気が付いた場合は、その申告等による税額が少なかった場合に修正申告を行うことができます。
逆に多く支払った場合は、その法定申告期限から 5 年以内に限り、税務署長に対して、その税額の更正を求める請求をすることができます。
つまり、いったん申告しておき、税務署から指摘される前であれば修正が可能である場合があります。税金の計算は大変ですが、正確に計算しようとして期限を過ぎてしまうよりは、期限内にひとまず申告して納付するというのが重要なのです。
しかし、申告・納付したら終了ではなく、内容と実際に差額があるとみられる場合は、税務署から「税務調査」が入り、更正または決定により税額が追徴される場合には、ペナルティとして所定の加算税が課されますので、注意が必要です。
申告と納税義務を履行していることは経営管理ビザの重要な条件
日本の法律上、課税対象になれば納税することは当然のことです。
支払うべき税金を支払ってやっと日本に居住するスタートラインに立てるといってよいでしょう。
日本では納税についてかなり厳しい措置が取られますので、不明な点があったらうやむやにせず、税理士に確認することをおすすめします。
なお、ビザの申告の際には「行政書士」が申請を行ってくれますが、税金については相談も含め「税理士」の資格を持つ人以外がすることは、無料であっても法律で禁じられていますので注意が必要です。
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特に法人の決算は作成する資料も多く、計算も複雑なため、税理士と顧問契約を結ぶことをおすすめします。
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経営管理ビザと税金のまとめ
入管法の改正が行われた2019年以降、在留資格の審査厳格化の流れにおいて経営管理ビザの取得や更新といった審査もとても厳しくなってきているのが現状です。
経営管理ビザを許可する最終的な目的は、日本のためにきちんとお金を稼いで納税してくれるかどうかです。
そのため、事業の継続性や安定性をチェックされ、事業が利益を上げていないとビザの更新ができません。そして、収益を上げた分はちゃんと納税しないともちろん更新ができないのです。
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申告・納税を行っているかどうかは、経営管理ビザの取得・更新を行うにあたって最も基本となるところです。
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税金の種類や内容はとても複雑なため、どのように経理業務を行い、適正な金額を算出するかを早いタイミングで税理士に確認しておきましょう。