
外国人の方が日本に在留し会社経営をする場合、「経営管理ビザ」の取得を検討することになるでしょう。
どのような事業をするのか、職種は基本的に問われませんので様々な事業を展開することが可能です。
例えば不動産業等は比較的人気で、中国人の方は取得申請をするケースが多いようです。
その理由には色んな背景がありますが、一つには
不動産投資をしていれば経営管理ビザが取りやすい
という噂が関係しているようです。
しかしこのような事実はありません。
一部の国では一定以上の不動産投資によりビザが取得できるという運用がなされているためこのような勘違いが生まれていると考えられます。
そもそも日本には投資だけを目的としたビザは存在しませんので、投資をしているというだけで取得できるビザはありませんし、経営管理ビザは事業の経営をする者または管理をする者でなければなりません。
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以下では、不動産業を含む様々な事業に関して、中国人の方が経営管理ビザを取得する上で抑えておきたいポイントを解説していきます。
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経営管理ビザを中国人の方が取得する条件
経営管理ビザでは業種関係なく、取得に必要な条件がいくつかあります。例えば「事業所の確保」や「事業の規模」、さらに既存の会社の管理者になる場合には別の要件も満たさなければならなくなります。
「事業所の確保」については、原則事務所や店舗が日本にすでに用意されていることが経営管理ビザ取得のためには必須条件とされています。
そしてその事務所は設立した会社の法人名義で契約されていなければなりません。使用目的も当然事業用とし、住居と兼用で利用することは認められません。実際にビザを申請するとき、物件の契約書も見られますので、そこで居住用として契約していると許可が下りなくなります。
逆に賃貸事務所、レンタルオフィスであっても法人契約で独立した個室があれば認められますし、インキュベーションオフィス(起業家の支援を目的とした施設)でも問題ありません。一方でマンスリーマンションや共同事務所などでは基本的に認められません。
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自宅を事務所としても利用する場合には広さなどは関係なく不可とされています。
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ただし住居以外の目的で利用することが想定されており、契約上も事務所利用が許されているのであれば例外的に認められる可能性があります。
その代わり居住スペースと事務所スペースが完全に分離されているなど、いくつかの条件は満たさなければなりません。
「事業規模」に関しても一定以上の大きさがなければビザを取得することはできないことになっています。
事業規模は資本金額500万円程度が目安とされており、その他これと同等の規模であることが示せれば申請は可能です。
そのためには経営管理ビザの申請人以外に、2名以上の常勤職員を雇用することが必要でしょう。
なお資本金額500万円については申請者1人あたりの金額です。そのためパートナーがおり、共同経営をするためにその両者が経営管理ビザを取得する場合にはそれぞれが500万円程度準備しなければなりません。
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2人で合わせて500万円であればいいというわけではありませんので注意しましょう。
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出資のバランスも均等であることが望ましく、金額に大きなバラつきがないようにするべきです。
特定の事業では資格や許可を受けなければならないものもありますので、その場合には日本人同様、ビザとは別に許可等を受けていなければなりません。
土地の転売や買い取りなど、不動産取引仲介業を行うのであれば宅地建物取引業の免許が必要ですし、その他にも古物商や飲食店では別途営業許可が必要です。
さらに社会保険に関する手続きも必要です。これは強制適用ですので、必ず会社設立と同時に年金事務所等で手続きを済ませなければなりません。従業員がいるなら雇用保険も必要です。
また、新規に会社を立ち上げて自分が創業者となるのではなく、すでにある日本の会社の管理者となるために経営管理ビザを取得する場合には要件が少し変わりますのでこの点留意して申請するようにしましょう。
ここで言う管理者とは部長や支店長のような事業の管理に従事する役割を担う者を言います。
取締役などに就任する場合もここに該当します。管理者としての申請であれば、日本人がその職に就く場合と同等以上の報酬を設定してもらうことや、その管理業務につき3年以上の経験が必要とされます。
大学院で同領域の専攻をしていた場合にはその期間を算入することができますが、社会人経験や学歴が関係ない一般的な経営管理ビザのケースに比べてやや取得が難しくなっていることが分かるかと思います。
経営管理ビザを取得する中国人の方によくある職業
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次に中国人の方が経営管理ビザを取得するケースとしてよくある職業を紹介し、それぞれの職業において注意すべきポイントを解説していきます。
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不動産業
民泊の影響などもあり、不動産業を営むために経営管理ビザを取得しようとする方が多くいます。
これは近年の法改正により
- 民泊関連事業の開始方法がいくつか選べるようになったこと
- 違法営業が困難となったことで改めて申請をしようとする例が出てきたことに由来します
[say img=”https://collect-information.com/wp-content/uploads/2020/02/スクリーンショット-2020-02-24-16.38.44.jpg” name=””]さらに中国では土地の所有権が国にあり国民は使用権しか取得することができません。[/say]
そのため自分で土地を持ってみたいという願望が強くなりやすいこと、さらに、比較的自由な日本で子供と移住したいという目的でやってくる例も少なくありません。
ただ、不動産業で経営管理ビザを取得する場合には賃料収入が最低でも年間で300万円以上とならなくてはなりません。
そして可能であれば事業性を証明するためにも単一ではなく複数の物件を運用することが望ましいでしょう。
貸し付けもせず収益を生んでいない物件を取得しただけでは事業性が認められにくいです。
また不動産業を営む場合にはマンションの管理業務も必要になるでしょう。
そのときの清掃業務やメンテナンス、補修等に関してはアルバイト等を雇うか、外部の企業と管理委託契約を締結して任せるようにするべきです。
経営管理ビザを申請する者は現場労働をするのではなく、あくまで会社の経営や管理をする者と捉えられていますので、自らが動かなくてもいいように事業計画を立てます。
従業員を雇用する場合には人件費がかかってしまいますが、この費用を捻出するために申請人への報酬をカットしすぎないようにもしなければなりません。
最低でも月に18万円以上は確保したほうがいいです。ただし扶養をするかどうかによっても評価は変わってきますので、最低限の生活ができることを意識した報酬設定をするといいでしょう。
関連記事:経営管理ビザを不倒産投資で取得する際のポイントや注意点を解説
マッサージ業
次にマッサージ業ですが、ここでの注意点も上でも少し説明した通り、現場での業務です。
経営管理ビザでは基本的に現場対応ができないため、現場で働くことを避けるためは従業員を雇う必要が出てくるでしょう。
申請時にこの点を審査官から指摘されることも多いです。
そのためマッサージ業を営む場合には、申請者本人が経営者として活動する業務内容と、従業員がする業務内容を区別し、これを明確に示すようにしましょう。
飲食業
飲食業でもマッサージ業同様、申請者が現場業務をしがちですので注意しましょう。
ただ、どんな場合でも一切現場業務、つまり料理をすることができないということでもありません。
[say img=”https://collect-information.com/wp-content/uploads/2020/02/スクリーンショット-2020-02-24-16.38.44.jpg” name=””]例えばすでに日本国内の飲食店で料理人としての実績がある場合、その後独立して飲食業を経営するというケースもあるでしょう。[/say]
このときには経営管理ビザを取得してオーナーとして働きつつ料理をすることも可能とされています。
しかしながら経営者としての活動がメインとなるよう業務を分担することは求められますので、料理だけをする者として活動することはできません。
どうしても料理人として活動をしたい場合には別の在留資格を検討しましょう。
もしくは自分が経営管理ビザを取って経営者となり、仲間を呼んで別の在留資格を取得してもらうなどの方法も視野に入れるべきです。料理人であれば「技能ビザ」を取得して働くことになるでしょう。
語学学校
ビザ取得後の中国人の方によくある職業には、「語学学校」も挙げられます。やはり中国語の語学学校ということでしたら中国人であることの強みが活かせますし、需要も高い言語ですのでビジネスとして成り立ちやすいということもあるでしょう。
また中国語だけを学べる学校ではなく、これに併せて隣国である韓国語の教室、英語を学べる教室の開講も検討することがあるかと思います。
ただし、語学教室を経営しようとする場合においては、教室となる物件の準備や、カリキュラムや教材の準備なども欠かせません。他の事業とは大きく異なる特色を有しますので、それに伴う準備もしっかりしておかなければ経営管理ビザの取得もできなくなります。
例えば事業の実態があることのアピールなどもしなければなりませんので、できるだけオンライン授業だけでなく、現実に教室を構えて対面授業も行うようにしたほうがいいでしょう。ここで確かに事業内容である語学学校としての活動が行われていることを示しやすくなります。
また当然ですが学校を開くことになりますので事業計画の中で、どのような方針で教育を施していくのか、生徒の募集方法や雇うことになる先生に関することなどもまとめていかなければなりません。注意したいのはビザを申請する本人は会社の経営や管理業務がメインでなければならないということ。その本人が先生となり、現場で授業を行うのがメインの仕事となってしまうと経営管理ビザの趣旨からは外れてしまいます。そのためスタッフの雇用も必要になってくるでしょう。
なお、開業準備にあたり用意する資金(少なくとも500万円)の中には、教室の賃料、契約金、その他購入した備品なども含まれます。そのためこれらの購入・レンタルの際に発行された領収書はきちんと保管しておくようにしましょう。
経営管理ビザを中国人の方が取得する注意点
ここまでで解説してきたこと以外にも、特に出資金に関しては慎重になるべきです。また留学生が卒業後、留学ビザから経営管理ビザに切り替えることも可能ですが、取得難易度は高いと言えますので事前準備にはしっかりと取り組まなければなりません。
留学生が特に注意すべき点についても解説していきます。
お金の送金方法
中国ではお金の持ち出しが制限されています。そのため簡単に中国の方が日本に送金することはできず、日本で起業をするためのハードルは高いと言えます。
人民元が直接国際送金できないことから日本円に換金後、外貨口座からの送金をすることになります。
多くの場合、複数の親族の協力を得てそれぞれ限度額で換金、日本にお金が持ち出されています。もしくは地下銀行を介した持ち出しです。
なかなか多くのお金を中国から持ち出すのは難しい現状があり、近年もより監督が厳しくなっているようです。
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不正で日本へお金を持ち込む、または日本で不正にお金を集めたりすることのないようにしましょう。
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留学生からの切り替えの場合は要注意
留学生が学校を卒業後どこかの企業に就職するのではなく、会社を立ち上げて経営者となる場合には経営管理ビザへ切り替えることがあります。
しかし不正の目的で経営管理ビザを取得しようとする留学生もおり、これを防ぐために審査も慎重に行われています。
また不正をするつもりでなくても出席率が著しく低い場合や在学中の素行が悪い場合、開始する事業に関する知識や経験が乏しい場合などには取得できない可能性は高くなります。
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留学生だと事業に関する実績を持っていないことがほとんどだと思いますが、経営管理ビザでは事業の安定性および継続性が判断基準の一つでもあるため、すぐに潰れてしまうと判断されると取得はできません。
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経験や知識は事業を成功させられそうと思わせる一つの判断材料になるわけです。
ただし実績がなければ必ず取得できないわけではありませんので、留学で身につけた専門的な知識・技術を活かした事業を始めることや、事業計画書をしっかり作り込むことで対応できるでしょう。
審査官に、事業が継続できそうと思わせられるような、説得力ある資料を準備しなくてはなりません。
また留学生で問題となりやすいのが出資金です。留学ビザでは働くことが制限されていますので、大金を貯めることができません。
週28時間以上は絶対に超えないようにしなければいけませんし、このルールに違反していると経営管理ビザの申請に対しても不利になってしまいます。留学生が働いて得たお金は源泉徴収が行われることですべて把握されるため、週に28時間以内のアルバイトはきっちり守るようにしましょう。
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仮に親族等の協力が得られて出資金500万円を用意できたとしても、その出どころが明確にできなければビザが取得できないこともあります。
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これは外国人がマネーロンダリングを目的に会社を立ち上げようとする例があることも関係しています。犯罪等により入手したお金を隠すため、会社を立ち上げる者も存在しているのです。
こうした可能性を少しでも排除するため、出資金の出どころに関しては厳重に審査されるのです。家族に送金してもらったのであればその送金記録や家族の経済力を示す資料を準備しましょう。
関連記事:経営管理ビザに学生(留学)ビザから切り替えることはできるの?【卒業後に起業したい!】
まとめ
中国人の方でも日本で経営管理ビザを取得することは可能です。特に近年は様々な背景があり、不動産関連の事業が人気です。しかしながら不動産投資をしていれば簡単に経営管理ビザが取得できるということではありません。
こういった噂が出回っているようですが、経営管理ビザは比較的難易度の高いビザですので、しっかりと事前準備をしていくことが大切です。
特に出資金の準備から、その出どころを証明することは重要です。
留学生が卒業後起業をして経営管理ビザで在留しようとするのであれば、質の高い事業計画書を作成しなければ審査は取りませんし、実務経験がないのであれば別のアピールポイントを作るなどして対策していかなければなりません。
申請のために必要な資料も多く、手続も複雑です。そこで費用はかかりますが専門家への依頼をしておくことがおすすめです。行政書士であれば申請書等の各種書類作成を代行でしてくれますし、お金に関しては税理士への相談もしておくといいでしょう。事業計画書の適切な書き方や、その他困ったことがあってもサポートをしてくれます。